症状|三ノ輪駅徒歩1分の歯医者(台東区根岸)橋本歯科医院

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症状

≪歯が痛い≫

歯の痛みは、主に、むし歯によるものと、歯周病など歯周組織に起因するものとがあります。むし歯が神経(歯髄)まで達していない場合は、神経を保護し痛みを取った後、詰めたり(充填処置)、被せたり(歯冠修復)します。むし歯が神経に達していたり、すでに神経が死んでいる場合は、歯の根っこの治療(根管治療)を行います。根管治療は、症状の程度によりますが数回かかります。その後、充填処置や修復処置を行います。
歯周病が原因の場合は、後述の歯周治療を行います。その他、歯が割れていたり、かみ合わせの負担が強すぎるときなどに、歯が痛むことがあります。

≪歯がしみる≫

歯がしみたり、ピリッと来るときは、知覚過敏やむし歯が疑われます。知覚過敏は、主に、歯が削れて象牙質がでてきたために、象牙質の中の神経線維が刺激されることによって生じます。知覚過敏には、症状を抑える薬を塗ったり、材料を詰めたりします。知覚過敏が進行すると、神経(歯髄)をとらなければならないこともあるので、気になったら早めの来院が大切です。また、むし歯が原因で歯がしみることも多いです。この場合は、上述の充填処置や、修復処置を行います。

≪歯肉が痛い、腫れた≫

これらの歯肉の症状は、歯周病によるものと、むし歯の進行によって生じる根っこの先端の炎症(根尖性歯周炎)が多いです。前者は歯周治療を行い、後者は既述の根管治療を行います。
その他、義歯の床が当たっていたり、歯の根が割れたり(歯根破折)、親知らずのように埋まった歯(埋伏歯)が原因となって、歯肉の腫れや痛みが生じることがあります。義歯が原因のときは、義歯の修理調整を行います。歯根破折や埋伏歯が原因のときは、炎症を飲み薬で抑えてから抜歯することが多いです。

≪歯の色が悪い、歯の見た目が悪い≫

歯の見た目は、歯並びによるものと、歯の形態によるものがあります。歯並びがよくない場合、充填や歯冠修復によって補うこともありますが、矯正治療が必要なことが多いです。歯の形態がよくない場合、充填や歯冠修復で補います。後述のように方法や材料はさまざまです。
歯の色は、まず、歯の表面のポリッシングを行います。必要に応じて、パウダーを高圧によって吹き付けたり(エアフロー)、後述のホワイトニングを行います。

≪あごの関節が痛い、口が開きにくい≫

上記の症状に加え、口をあけたときにカクっと音がするような時は、顎関節症と考えられます。関節の音だけだと特に治療は行いませんが、痛みを伴うときは、薬の服用やマウスピース(スプリント)の装着で痛みを抑えていきます。スプリントは咬み合わせを安定させ、咬み合わせの高さを少し高くすることで顎関節の負担を和らげます。1か月を目安に、基本的に夜間装着します。
口が開きにくいときは、手を用いて顎関節の可動性を改善させるよう誘導します(マニュピレーション)。その上で、ご自宅での開口訓練を指示します。

≪口が渇きやすい≫

近年注目されている症状が、口の渇きです。ドライマウス症候群といわれています。原因は、シェーグレン症候群、薬物の副作用、放射線治療、糖尿病など様々で、不明な点も多いです。内服薬の変更や、よく咬む習慣をつける、唾液腺マッサージや唾液腺刺激運動の指導、保湿剤の利用など、原因除去療法と対症療法を併用します。

≪金属アレルギーがある≫

(図1)掌蹠膿疱症
(図2)扁平苔癬

金属そのものはアレルゲン(アレルギーの原因)になりませんが、溶け出して体由来の蛋白質と結合するとアレルギーを引き起こすことがあります1)。実際に、掌蹠膿疱症2)(図1)や扁平苔癬3)(図2)など、金属アレルギーが原因となりうる疾患があります。
しかし、掌蹠膿疱症は病巣感染4)、扁平苔癬はC型肝炎5)など、他の原因によって発症している場合もあります。このように、気になる症状がお口の中の金属が原因で生じることは、そう多くはないかもしれません。私がこう思うのは、金属アレルギーは統計学的な調査6-8)はなされているものの、その発症機序や、疫学的な発症頻度が十分に明らかにされていないことがあるからです9)。
大切なことは、皮膚科や口腔外科の医師・歯科医師と連携をとりながら、金属アレルギーが関与しうる病気なのか、金属アレルギーがあるのか、ある場合口の中の金属が関与しうるのか、をしっかりと診断することです10)。そして、口の中の金属が関与しうる場合、歯科治療は金属アレルギーに対する原則にのっとりながらも、そのメリットとデメリットを勘案しながら患者さまに合った材料を用いて行っていくことです。当院では、患者さまが不安に思われることも十分に説明しながら診断治療を行っていきますので、お気軽にご相談ください。

【参考文献】


1)野村修一,橋本明彦:歯科金属アレルギーの臨床.新潟歯学会誌,34: 1-10, 2004.
2)中山秀夫,村田真道,中野直也,他:金属アレルギーの観点から検討した掌蹠膿疱症.皮膚臨床,16(5): 313-329, 1974.
3)中山秀夫,大城晶子,佐藤重臣,他:歯科金属アレルギーによると思われる扁平苔癬の2例について.耳鼻咽喉科,44: 239-247, 1972.
4)山本洋子, 橋本明彦, 冨樫きょう子,他:掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性について.日本皮膚科学会雑誌,111: 821-826, 2001.
5)清水純子,伊藤明子,橋本明彦,他:新潟大学皮膚科における10年間の扁平苔癬症例のまとめ;特に歯科金属との関連について.日本皮膚科学会雑誌,114: 1277-1282, 2004.
6)橋本明彦,我田 健,西澤泰朋,他:歯科金属アレルギーが疑われる症例の臨床統計学的検討.新潟歯学会誌,26(1): 39-49, 1996.
7)藤井弘之:金属アレルギーと歯科臨床.日本歯科医師会雑誌,49: 6-16, 1996.
8)埴 英郎,益田高行,廣原英樹:歯科アレルギー外来受診者の実態.GPのための金属アレルギー臨床,井上昌幸(監),62-69頁,デンタルダイヤモンド社,東京,2003.
9)橋本明彦,小林康子,木暮城二,他:歯科金属アレルギーの治療の実際と最近の考え方.歯界展望,100: 157-164, 2002.
10)野村修一(橋本明彦,山本洋子他協力):歯科金属アレルギーの診断と臨床.日本歯科医師会生涯研修ライブラリー(DVD)内容紹介,0404: 13-15, 2004.

≪掌蹠膿疱症と診断された≫

掌蹠膿疱症は、手のひら(掌)と足のうら(足蹠)に、細菌などの病原体を含まない無菌性膿疱が反復して出現する疾患です。慢性に経過し、治るのに時間がかかるとされています。
掌蹠膿疱症の原因や悪くなる要因(増悪因子)は様々ですが、手足から離れた場所にある病巣が原因となって生じること(病巣感染)があります。感染病巣の一つとされる扁桃腺を摘出してすっかり良くなった9例が報告1)されて以降、慢性病巣の除去は掌蹠膿疱症の良い治療法とされています。歯科に関わる内容が記されたものでは、73例に扁桃腺の摘出を行い、非扁桃摘出グループに比較して摘出が良いとした報告があります2)。その中で、歯科の病巣(歯性病巣)治療で改善した例が報告されています。その他、金属アレルギーの与が報告され3)、歯科金属アレルギーも原因の一つとして挙げられています。

新潟大学医学部皮膚科の冨樫らは、金属アレルギーを有する掌蹠膿疱症症例のアレルギーの原因となりうる金属(アレルゲン金属)除去だけでなく、歯性病巣の検索と治療も行なった29例の症例について、歯科治療により7例が著明に改善したと報告しています4)。その後、同皮膚科の山本らは60例の掌蹠膿疱症症例について、歯性病巣治療の有効性について検討しています5)。その中で、病巣治療を終了したグループと、治療途中だが病巣治療を開始したグループの有効率は、無治療グループに比べて有意に高かったとしています。
近年の報告では、掌蹠膿疱症において発症原因としては歯性病巣がもっとも多く、金属アレルギーの合併率は5%程度としています6)。また、歯科金属アレルギーは掌蹠膿疱症の主原因ではないと題した掌蹠膿疱症257症例を対象とした調査があります7)。この報告は金属アレルギー陽性で口腔内補綴物にアレルゲンのあった症例のうち、アレルゲン除去を行った24症例と行わなかった23症例の症状を判定し、歯性病巣の治療も考慮に加え比較しています。その結果、除去グループと除去しなかったグループで有意差はなく、金属アレルギー陽性でも直ちにアレルゲンを除去するより歯性病巣の有無を診査すべきと結論付けています。
当院は掌蹠膿疱症コミュニティの連携医となっており、下記の文献的な報告も踏まえ、皮膚科担当の先生方と連携しながら必要な歯科治療を行っていきます。

【参考文献】

1)Andrews GC & Machacek GF: Pustular bacterids of the hand and feet, Arch Dermatol Syph, 32: 837-847,  1935
2)小野友道:掌蹠膿疱症の治療、扁摘の効果について,日皮会誌,86: 677-683, 1976
3)中山秀夫,国本法雄,他:金属アレルギーの観点から検討した掌蹠膿疱症(第2報),日皮会誌,86:703-707, 1976
4)冨樫きょう子,橋本明彦:掌蹠膿疱症治療のポイント,臨皮,52(5増):123-128, 1998
5)山本洋子,橋本明彦,他:掌蹠膿疱症における歯性病巣治療の有効性について,日皮会誌,111:821-826, 2001
6)小林里実:掌蹠膿疱症の診断と治療,皮膚臨床,60(10):1539-1544, 2018
7)Y. Masui, A. Ito, et al: Dental metal allergy is not the main cause of palmoplantar pustulosis, JEADV, 33: e180-e181, 2019